DX推進に欠かせないITシステムの導入。自社に合うITシステムを探し、運用定着を図れるかがDXの成功に大きく左右します。では、最適なITシステムをどう選び、運用すべきか。ここではITシステムを選ぶときのポイントを紹介します。なお、本連載はプレジデント社「成功=ヒト×DX」の内容をもとに編集しております。
ITシステムはクラウドファーストを目指せ
前回は、社内のITシステムを見える化し、具体的にどんな課題があるのかを機能や技術、費用、組織の観点で考察する必要性を提起しました。今回は、新たなITシステムを選定するときのポイントを紹介します。
参考:前回の記事/ITシステムの見える化と課題の洗い出し方法はこちら
システム全容を見える化し、機能・技術・費用・組織の4視点で課題を追求せよ 自社で現在使用中のITシステムの課題と原因を把握したら、次に課題解決を図ります。解決策の1つとなるのが、課題を抱える既存ITシステムを新ITシステムに刷新する方法です。 このとき考えるのが、ITシステムは「所有から利用」へ変わっていること。つまり、オンプレミスシステムを購入(所有)するのではなく、クラウドサービスを利用することを前提にITシステム刷新を模索すべきです。クラウドサービスを利用することで、ITシステムの課題となりがちな「機能」「技術」「費用」「組織」の各問題を解決しやすくなります。 例えば、「システムインフラが老朽化している」という課題を抱えていたら、アマゾンの「AWS(Amazon Web Services)」やマイクロソフトの「Microsoft Azure」などのクラウドサービスの利用を検討します。営業やマーケティング、経理などの業務を効率化したいなら、各業務に特化したSaaSの利用を検討します。 このようにITシステムを新たに導入するなら、今後はクラウドファーストを前提に考えるべきです。
システム全容を見える化し、機能・技術・費用・組織の4視点で課題を追求せよ 自社で現在使用中のITシステムの課題と原因を把握したら、次に課題解決を図ります。解決策の1つとなるのが、課題を抱える既存ITシステムを新ITシステムに刷新する方法です。 このとき考えるのが、ITシステムは「所有から利用」へ変わっていること。つまり、オンプレミスシステムを購入(所有)するのではなく、クラウドサービスを利用することを前提にITシステム刷新を模索すべきです。クラウドサービスを利用することで、ITシステムの課題となりがちな「機能」「技術」「費用」「組織」の各問題を解決しやすくなります。 例えば、「システムインフラが老朽化している」という課題を抱えていたら、アマゾンの「AWS(Amazon Web Services)」やマイクロソフトの「Microsoft Azure」などのクラウドサービスの利用を検討します。営業やマーケティング、経理などの業務を効率化したいなら、各業務に特化したSaaSの利用を検討します。 このようにITシステムを新たに導入するなら、今後はクラウドファーストを前提に考えるべきです。
ノンカスタマイズで業務をシステムに合わせよ
最近はさまざまな業務領域をカバーするSaaSが登場しています。現在のニーズや課題解決に直結する機能を備えたSaaSが次々登場するなど、業務システムのSaaS化が加速しています。
こうしたたくさんの選択肢の中から自社に最適なSaaSを選ぶとき、何を決め手にすればよいのでしょうか。
このとき大切なのが、「システムを業務に合わせる」という考え方から「業務をシステムに合わせる」という考え方への転換です。
企業の中にはSaaS導入後、「こんな機能が欲しい」「このままでは使えない」などの声を上げるケースが見られます。その結果、こうしたニーズに応えようと機能を追加するなどのカスタマイズを実施する企業があります。このカスタマイズこそ、「システムを業務に合わせる」という考え方にほかなりません。
クラウドサービスは、利用する企業で共有利用することを前提にしたITシステムです。一方で利用者の意見を反映すべく、頻繁に機能強化を繰り返すのもクラウドサービスの特徴です。
もしカスタマイズすると、アップデートによる機能強化の恩恵を受けられなくなる恐れがあります。もちろん、カスタマイズによる費用も発生します。これらのデメリットをなくすには、「業務をシステムに合わせる」の考え方にシフトするのが手です。システムの進め方に合うよう業務を見直します。これにより、将来の変化に追随する機能強化の恩恵を享受し続けられるようにします。
クラウドサービス導入を成功させるなら、「ノンカスタマイズ」で運用することも極めて大切です。
部署単位ではなく全社視点でクラウドを検討せよ
部署ごとにクラウドサービスを導入する際も注意が必要です。例えば部署別にマーケティング担当がいる場合、部署ごとに異なるマーケティング支援サービス(クラウドサービス)を導入することが起こり得ます。全社でシステムを統一しないと、ランニングコストが膨らむほか、生産性の向上も望めません。
SaaSの導入は容易なため、他部署に相談せず独自に導入してしまうのが主な原因です。その結果、他部署とデータ連携しにくいなどの課題が顕在化し、全社的にバラバラなITシステムを運用せざる得なくなります。
SaaSを提供するITベンダーがユーザー企業の全社視点を無視し、SaaSを提案してしまうことにも問題があります。その結果、全社での運用を想定した適正なITシステムが導入されにくくなります。
全社視点の業務改革を実施し、その上で適正なクラウドサービスを選ぶようにすることが大切です。
公平性あるオープンな議論でクラウドを選定せよ
自社主導でITシステムを選定、導入することにも目を向けます。もっとも、「社内にITシステムに詳しいものがいない」「最新のITシステムに精通していない」などの理由で、どんなITシステムを選定すればいいのか分からない企業は少なくないでしょう。
そんなときは、ITシステムの知識と導入実績を持つ外部の専門家に社内ディスカッションに参加してもらい、オープンな議論を重ねるようにします。ただし専門家はクラウドサービスを開発・提供するITベンダーの人は避けるべきです。自社のクラウドサービスを提案される懸念があり、公平に選定できなくなります。
筆者もクライアントである企業に対し、クラウドサービスの選定や導入を支援してきましたが、「過去に取り引きのあるシステム会社に選定や検討を依頼している」という声を多く聞きます。これでは現状のITシステムを使い続けることになるほか、ITシステムの規模や費用も膨らんでしまいます。クラウドサービスの比較表を作成し、過去の取り引き実績などを無視してゼロベースで評価することが大切です。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。
前回までの記事はこちら
#1 他人任せの意識がDXを停滞させる
#2 「デジタル格差」が迷走に拍車をかける
#3 社内の人材育成が、DXを成功に導く
#4 「経営者の決意」が変革の第一歩
#5 DX推進に消極的な経営者を説得せよ、経営者タイプに応じた効果的な説得方法とは?
#6 リスクは回避せずに受け入れろ! 弱腰な経営者のもとでDX成功はあり得ない
#7 DXの成否を決める「推進体制」、構築に必要な3つのポイント
#8 優秀なメンバーを集めるだけでは不十分、DXを進める体制構築で最も大切な6つの極意
#9 DXプロジェクト始動時の注意点、抵抗勢力との衝突を想定した対策を
#10 業務改革の課題解決に役立つ3つの視点、迷走しない進め方とは
#11 業務の流れと課題を丸裸にする業務フロー図の描き方
#12 業務の課題を原因や優先度で分類、3つの方法で課題解決を模索せよ
#13 ITは自社でコントロールし、クラウドを前提とした柔軟なシステム像を描け
#14 システム全容を見える化し、機能・技術・費用・組織の4視点で課題を追求せよ
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