同じように話しているはずなのに、なぜ本音を語る人と、そうでない人がいるのか。多くのビジネスパーソンは「話し方」ばかり磨きがちですが、それだけでは信頼は生まれません。重要なのは、相手の心を開かせる「聴く力」と「引き出す力」です。では、相手と真の信頼を築くにはどんな「会話力」が求められるのか。その本質に迫ります。【週刊SUZUKI #161】
「会話力がある人」と聞くと、多くの人は滑らかな口調で話し、巧みなジョークで場を盛り上げ、圧倒的な知識量で相手を論破するような人を思い浮かべるでしょう。しかし、ビジネスの場でこうした一方的なパフォーマンスは逆効果を招きかねません。真の会話力とは、相手の心の壁を解きほぐし、「この人なら本音や弱音を漏らしても大丈夫」という安心感を醸成する力のことです。話す技術以上に、「聴く技術」や「引き出す技術」が求められます。
では、相手が本音や弱音を漏らすには、聞く側にどんな姿勢が必要か。大切なのは、温かな受容の空気を生み出し、放つことです。例えば、過去のビジネスの失敗を話したがる人は少ないでしょう。もし、こうしたデリケートな話題を口にするには、適切なタイミングでの相槌や相手の言葉を繰り返すバックトラッキング、さらに言葉以上に雄弁に共感を示す眼差しなどが欠かせません。これらの非言語的要素を駆使し、相手が話しやすい舞台を整えることが、会話力の大半を占める重要な要素となります。
とはいえ、話を真摯に聴くだけでは、ただの「癒やし」に過ぎません。会話力を形成する要素には、対話を通じて「理解と前進」を生み出せるかどうかも必要です。相手の抽象的な悩みの中から本質的な課題を見つけ、「つまり、あなたが本当に変えたいのは、この部分ではないか?」と的中できるようにします。相手自身も気気付かない思考の裏側を探り、解決策まで導出するプロセスを相手に提供できるかどうか。会話力を身に付けるには、こうした要素が強く求められるのです。
会話力は、先天的な才能ではありません。人と話す中で相手を尊重し、言葉の重みを噛み締め、相手の幸せを願うという姿勢を日々積み重ねることで培われます。自分の言いたいことを飲み込み、相手が何を言おうとしているのかに全神経を集中させる「自己抑制」と「献身」の姿勢が、相手の「あなたに話してよかった」という気持ちを引き出します。こうした相手の気持ちを引き出し、相手と真の関係を築かない限りビジネスは前進しません。ビジネスを成長させる源泉として、一生をかけて会話力を磨き続けなければならないのです。
【営業の心得 その4】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
富士通、ソフトバンクを経て99年に現セブンネットショッピングを設立。セブン&アイHLDGS.取締役執行役員CIOとしてグループのデジタルトランスフォーメーションを推進。17年にデジタルシフトウェーブを設立し現職。日本オムニチャネル協会会長等も務める。






















