「大丈夫です」
当時の私は、その言葉をよく使っていました。
ある出版社様の全社DX推進プロジェクトに入った頃の話です。
進捗を聞かれても「大丈夫です」、確認状況を聞かれても「大丈夫です」、課題がないか聞かれても「大丈夫です」と答えてました。
正直に言うと、私は“やれているつもり”でした。会議を回している。進捗確認もしている。関係者への依頼もしている。
だから、プロジェクトは進んでいると思っていたのです。しかし実際には、確認漏れや認識ズレが積み重なり、気づけばプロジェクト全体の空気は少しずつ悪くなっていました。今振り返ると、私は「大丈夫です」という言葉で、自分を守っていたのだと思います。
確認できていない。
不安がある。
でも、それを認めたくなかった。
そして気づけば、報告を濁し、問題を小さく見せようとしていました。私はこの経験で、自分自身を全否定したくなるほど落ち込みました。
正直、「自分はプロジェクト推進に向いていないのかもしれない」とまで思いました。ただ、この失敗があったからこそ、今の仕事の向き合い方があります。今回は、私がDXプロジェクト推進で最初に学んだ「大丈夫です」の怖さについてお話ししたいと思います。
会議を回せば、プロジェクトは進むと思っていた
当時の私は、DX推進やPMOの仕事をかなりシンプルに考えていました。
定例会を開く。
進捗を確認する。
課題を整理する。
関係者へ依頼する。
それを回していれば、プロジェクトは前に進むと思っていたのです。実際、会議自体は回っていました。
議事録もある。
依頼も出している。
だから私は、「やれている」と思っていました。しかし、実際には全然足りていませんでした。
会議で話した内容は、本当に伝わっているのか。
依頼内容は、正しく理解されているのか。
誰が不安を抱えているのか。
本来見るべきものを、私は全く見れていなかったのです。
「大丈夫です」は、自分を守る言葉だった
今思えば、確認できていない時ほど、私は「大丈夫です」と言っていました。
本当は不安がある。
確認も追いついていない。
でも、「できていません」と言うのが怖かったのです。
未熟だと思われたくなかった。
期待を裏切りたくなかった。
信頼を失いたくなかった。
だから私は、「大丈夫です」でその場を乗り切ろうとしていました。しかし当然、それで問題が解決するわけではありません。
確認漏れは後から表面化する。
認識ズレは後半で大きな問題になる。
そして、「大丈夫です」を繰り返すほど、周囲からの信頼は少しずつ失われていきました。今振り返ると、私はプロジェクトを守っていたのではありません。自分を守っていたのです。
「やれているつもり」が一番危ない
私はこの経験で、「やれているつもり」が一番危ないと学びました。
会議を回している。
依頼をしている。
進捗を聞いている。
それだけで、仕事をした気になっていたのです。しかし、本当に大切なのは、その先でした。
相手は理解できているか。
不安はないか。
認識は揃っているか。
本当に進められる状態になっているか。
そこまで見れて、初めて「進めている」と言えるのだと思います。
弊社代表鈴木の「仕事の心得」に、『信とは、信頼のこと。信頼は、「言ったことをやる(言行一致)」で得ることができる。』という言葉があります。
当時の私は、「大丈夫です」と言いながら、言行一致できていなかった。だから信頼を失った。今でも、「あの時もっと早く確認できたな」「もっと先に相談できたな」と反省することはあります。でも、あの失敗を経験したからこそ、格好よく進めることより、泥臭く確認を積み重ねることの大切さを学びました。
現場はそんなに甘くない。
だからこそ私は、小さい違和感を放置しないこと、小さい確認を後回しにしないこと、そして「大丈夫です」を簡単に使わないことを大切にしています。むしろ今は、「大丈夫です」と言われた時こそ、本当に大丈夫かを確認するようになりました。DXも仕事も、結局は人が進めるものです。派手なツールや最新技術よりも、目の前の相手と向き合い、泥臭く確認を積み重ねられる人の方が、最後は信頼される。
私は、あの失敗からそう学びました。

プロフィール
香田雄大
株式会社デジタルシフトウェーブ
DXソリューション部 マネージャー
企業の変革を現場から支え、業務改革やAI活用、
システム導入等のプロジェクトを推進。





















