4月、新たな門出を迎える新入社員に向けて、各企業の社長が発するメッセージには、その企業が大切にしている価値観だけでなく、時代の変化に対する認識や、これからの人材に求める姿勢が色濃く表れています。2026年度の入社式における各社のメッセージを見ていくと、一見それぞれ異なる言葉で語られているようでいて、共通するいくつかの本質的なテーマが浮かび上がってきます。
丸紅・三菱商事・ENEOSなど各社社長メッセージに見る企業の価値観
まず、丸紅は「人としての本分を尽くす」ことを起点に、「正・新・和」という価値観を掲げました。誠実であること(正)、変化を先取りし自らを新しくし続けること(新)、そして多様な意見や立場を融合すること(和)。これらは単なる行動指針ではなく、仕事を通じて人格を磨き続けるという、人間としての在り方そのものに踏み込んだメッセージです。
一方、伊藤忠テクノソリューションズは「Challenging Tomorrow’s Changes」という理念のもと、変化を待つのではなく、自ら挑戦し未来を切り拓く姿勢を強調しています。特に「挑戦しないことこそが最大の機会損失」という言葉に象徴されるように、行動することそのものに価値を置いている点が特徴的です。
ファミリーマートは、リアル店舗とデジタルの融合という事業背景を踏まえつつ、「現場」に立脚した価値創出を重視しています。すべての仕事は最終的に店舗に帰結するという考えのもと、「なぜこの作業が必要なのか」「どうすればより良くなるか」を自ら考える姿勢を求めています。また、「士魂商才」という言葉に象徴されるように、倫理観とビジネス感覚の両立を重視しています。
ENEOSは、エネルギー供給という社会インフラを担う立場から、「安全」「対話」「三現主義(現場・現物・現実)」という極めて実践的な価値観を提示しました。不確実性の高い時代においては、机上の議論ではなく、現場で何が起きているかを自分の目で確かめる姿勢が重要であることが強調されています。
三菱商事は、「プロとして価値を提供する」という意識への転換を求めています。学生時代の「成長のために学ぶ」姿勢から、「価値を生み出すために働く」姿勢への転換です。また、AI時代においても「自分で考え抜く力」を持つことの重要性を強調し、思考そのものを外部に委ねるリスクにも言及しています。
三井物産は、「挑戦と創造」という精神と、それを支える「信用」の重要性を提示しています。変化をチャンスとして捉え、仮説と実践を繰り返すこと、そしてその積み重ねが信頼を生むという考え方です。また、当事者意識を持ち、自分なりの判断軸を持つことの重要性にも踏み込んでいます。
各社メッセージを横断して浮かび上がる「これからの人材像」
これらを横断して見ると、いくつかの共通点が浮かび上がってきます。
第一に、「主体的に行動すること」が多くの企業で求められている点です。挑戦する(CTC)、自ら考える(ファミリーマート)、当事者意識を持つ(三井物産)など、表現は異なりますが、「受け身ではなく、自ら動くこと」を重視する姿勢が見て取れます。
第二に、「変化への適応にとどまらず、変化を生み出す姿勢」です。丸紅の「新」、CTCの「変化を創る」、三井物産の「挑戦と創造」など、変化を前提としながらも、その変化に主体的に関わることの重要性が語られています。
第三に、「信頼や倫理観といった人間性の重視」が複数の企業で見られる点です。丸紅の誠実さ、ファミリーマートの士魂商才、三井物産の信用など、長期的な信頼関係の構築を重視する姿勢が共通して見受けられます。
そして第四に、「現場・実践・思考の重視」です。ENEOSの三現主義や三菱商事の「考え抜く力」に象徴されるように、現場に向き合い、自分の頭で考え、価値を生み出す力の重要性が示されています。
これらを総合すると、2026年の企業が新入社員に対して、スキルそのもの以上に重視しているのは、どのような姿勢で仕事に向き合うかという“スタンス”だといえます。
変化が激しく、正解が存在しない時代においては、知識やスキルはすぐに陳腐化していきます。一方で、主体的に考え、行動し、現場に向き合い、信頼を積み重ねながら価値を生み出していく姿勢は、どの時代においても通用する力です。各社のメッセージを横断すると、共通して浮かび上がってくるのは、「自ら考え、行動し、価値を生み出す人材であってほしい」という期待です。
新入社員に向けた言葉の中に、企業の未来だけでなく、この時代を生きるビジネスパーソンの在り方そのものが示されています。
レポート/DXマガジン編集部 小松
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