「ECが伸びれば、リアル店舗は不要になる。」かつて、そう言われていました。実際、多くの企業がオンライン化を進め、リアル店舗は“コスト”として語られる場面も増えてきました。商品を探すのも、比較するのも、購入するのもオンラインで完結する時代です。だからこそ、「店舗は減っていく」という見方は自然だったのかもしれません。しかし今、世界では少し違う変化が起き始めています。EC利用が進む中で、リアル店舗の“役割そのもの”が変わり始めているのです。特にイギリスでは、その変化が顕著に見られます。
イギリスではEC利用が生活に浸透
イギリスでは、オンライン販売比率が非常に高い水準にあります。英国国家統計局(ONS)によると、2026年3月時点で、小売売上に占めるオンライン販売比率は28.7%となっています。一方、日本の物販系BtoC EC化率は2024年時点で9.78%です。統計定義の違いには注意が必要ですが、イギリスでは日本以上に、ECが生活に深く入り込んでいることが分かります。
また、イギリスでは「Click&Collect」が広く提供されています。例えば、 Tesco や John Lewis など、多くの主要小売企業が、オンライン注文した商品を店舗や受け取り拠点で受け取れる仕組みを展開しています。
つまりイギリスでは、「ECか店舗か」という二択ではなく、オンラインとリアルを組み合わせた購買行動を支える仕組みが広がっているのです。
EC時代に、店舗の役割そのものが変わり始めている
ここで重要なのは、「ECが伸びている」という事実だけではありません。本当に変わり始めているのは、“リアル店舗の役割”です。これまで店舗は、「商品を並べて販売する場所」でした。しかし現在は、それだけではなくなり始めています。例えば、EC商品の受け取り拠点として機能したり、ブランドと顧客が接点を持つ場所になったり、商品を実際に体験する空間として活用されたりするケースが増えています。
実際、Click&Collectが普及すると、店舗は単なる“売場”ではなく、“受け取り導線”の一部になります。つまりリアル店舗は、販売のためだけの場所ではなく、生活導線の接点としての役割も担い始めているのです。これは、「ECがリアルを壊す」というより、“ECによってリアルの意味が変わっている”と言った方が近いのかもしれません。
なぜ今、“体験”の価値が問われ始めているのか
ECが普及すると、価格比較や商品検索は簡単になります。似た商品もすぐ見つかり、オンライン上で最適化が進みます。つまり、「モノを買う」という機能だけで見れば、オンラインの利便性は今後さらに高まっていく可能性があります。だからこそ今、企業は「何を売るか」だけではなく、「どんな体験を提供するか」を問われ始めています。
店舗に行く理由も変わりつつあります。単純に“買うため”だけではなく、ブランドの世界観に触れるためだったり、接客を受けるためだったり、商品を実際に体験するためだったりと、リアルならではの価値が重視され始めているようにも見えます。実際、イギリスでは一部小売企業で、オンラインでは提供しにくい店舗体験を強化する動きも見られます。つまり、リアル店舗は「モノを売る場所」から、「ブランドとの接点」へ変化し始めている可能性があります。
これは小売だけの話ではない
この変化は、小売業だけの話ではありません。メーカー、商業施設、IT企業、CRM、CX、AIなど、顧客接点を持つすべての企業に関係しています。例えばAIが進化すればするほど、オンライン上での検索・比較・最適化はさらに加速していきます。一方で、“リアルでしか感じられない価値”の重要性も高まる可能性があります。だからこそ今、DXは単なるデジタル化ではなく、「リアルとデジタルをどう再設計するか」というフェーズに入り始めているのかもしれません。
「リアル店舗」はこれからどう変わるのか
では実際に、イギリスでは何が起きているのでしょうか。なぜClick&Collectがここまで広がったのか。なぜキャッシュレスが日常化したのか。なぜEC時代に、リアル店舗の役割が変わっているのか。こうした変化について、DXマガジンでは「イギリス流通」をテーマにしたDX経営セミナーを開催します。
2026年4月に実施したロンドン・マンチェスター視察をもとに、現地で見えてきた最新の流通変化や、日本企業がこれから向き合うべき変化について考えていきます。単なる海外事例紹介ではなく、「日本企業はこれから何を変える必要があるのか」そのヒントを探る内容です。
詳細は、下記記事をご覧ください。






















