経営をしていると、「正解を教えてほしい」と思う場面があります。
新しい事業に投資するべきか。撤退するべきか。人を増やすべきか。AIにどこまで任せるべきか。
しかし、経営の世界には、最初から答えが分かっている問題はほとんどありません。むしろ、正解が分からない中で決めなければならない。それが経営者の仕事だと思います。
情報を集めても、最後は答えが出ない
今は、昔とは比べものにならないほど多くの情報を集められる時代です。市場データも、競合情報も、顧客の声もあります。AIを使えば、情報を整理し、複数の選択肢を出すこともできます。それでも最後に、「では、どちらを選ぶのか」という問いは残ります。
データが100%未来を保証してくれることはありません。専門家の意見も分かれることがあります。AIも、選択肢は示してくれますが、経営者の代わりに責任を取ってくれるわけではありません。
だから最後は、自分で決めるしかありません。
「もっと情報が必要だ」は逃げになることもある
経営の現場では、「もう少し情報を集めてから決めよう」という言葉をよく聞きます。もちろん、情報収集は重要です。
しかし、時にはそれが、決めないための理由になっていることがあります。不確実な時代ほど、情報を集め続けても安心できる瞬間はなかなか来ません。そして、決断を先送りしている間にも、市場は変わり、競合は動き、顧客も変わっていきます。何も決めないことも、一つの決断です。そして場合によっては、それが最も大きなリスクになります。
決めるとは、未来に責任を持つこと
私は、経営者に必要な「決める力」とは、勘だけで素早く判断することではないと思っています。必要な情報を集める。周囲の意見を聞く。AIも使う。そのうえで、自分なりの仮説を持つ。
そして最後は、「この方向でいく」と決める。
大切なのは、その判断が必ず当たることではありません。間違ったと分かったら、修正すればいい。むしろ怖いのは、失敗しないことを優先するあまり、何も決められなくなることです。
正解を探す経営から、正解をつくる経営へ
これからは、環境変化のスピードがさらに速くなります。AIも進化し、これまでの常識が通用しなくなる場面も増えるでしょう。そんな時代に、過去の成功事例から正解を探し続けるだけでは、経営は難しくなります。必要なのは、正解を探す力ではなく、仮説を持って決め、動きながら正解に近づけていく力です。
経営者の価値は、何でも知っていることではありません。分からないことがある中でも、方向を示し、決めること。そして、その決断の結果を引き受けること。そこにあるのだと思います。
最後に、皆さんに一つ問いかけます。
あなたは今、「正解が分からないから決められない」と止まっていることはありませんか。

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
富士通、ソフトバンクを経て99年に現セブンネットショッピングを設立。セブン&アイHLDGS.取締役執行役員CIOとしてグループのデジタルトランスフォーメーションを推進。17年にデジタルシフトウェーブを設立し現職。日本オムニチャネル協会会長等も務める。





















