「頭のいい人」と聞いて、皆さんはどんな人を思い浮かべるでしょうか。
知識が豊富な人。計算が速い人。難しい問題にもすぐ答えられる人。論理的に物事を説明できる人。
これまでの社会では、こうした能力が高く評価されてきました。しかし、生成AIが急速に進化している今、その常識が変わり始めています。
今回は少し刺激的な問いから始めたいと思います。AI時代、「頭のいい人」の価値は下がるのでしょうか。
「答えを知っている」だけでは差がつかない
分からないことがあれば、以前は詳しい人に聞いたり、本やインターネットで調べたりしていました。今はAIに聞けば、かなりのことを瞬時に教えてくれます。文章を書く。情報を整理する。アイデアを出す。データを分析する。資料のたたき台を作る。これまで「頭を使う仕事」と考えられていた領域に、AIがどんどん入ってきています。
私は、これは人間の能力が不要になるという話ではないと思っています。
むしろ、人間に求められる能力が変わるということです。
知識をたくさん持っていることや、早く正解にたどり着くことだけでは、以前ほど大きな差がつかなくなります。なぜなら、AIも答えを出してくれるからです。
AIは答えてくれる。でも、決めてはくれない
では、人間には何が残るのでしょうか。私は、まず「何を考えるべきかを決める力」だと思います。
AIは、質問すれば答えてくれます。しかし、「そもそも何を問うべきなのか」は、人間が考えなければなりません。会社で売上が落ちているとします。「どうすれば売上を増やせるか」とAIに聞くことはできます。でも、本当の問題が商品なのか、顧客との関係なのか、組織なのか、あるいは事業そのものなのか。どこに違和感を持ち、何を問題として捉えるかによって、AIから得られる答えも変わります。
そして、いくつもの選択肢の中から「これをやる」と決め、責任を持って行動するのも人間です。
「頭のよさ」の定義が変わる
そう考えると、「頭のいい人」の価値が下がるというより、頭のよさの定義そのものが変わるのではないでしょうか。
知っている人から、考えられる人へ。答えられる人から、問える人へ。
一人で正解を出す人から、AIや周囲の人の力を使いながら前に進める人へ。私は、そんな変化が始まっているように感じます。
だからこそ、これから重要になるのは、AIと知識量で競争することではありません。AIを使いながら、自分は何を考え、何を判断し、何を実行するのか。そこに人間の価値が移っていくのだと思います。
AIによって、人間の差はむしろ広がる
そして私は、AIが普及すれば誰もが同じように仕事ができるようになる、とは考えていません。むしろ逆です。
AIを単なる「便利な回答機」として使う人と、自分の思考を深めるための「相棒」として使う人。
この差は、これから大きくなっていくでしょう。AIによって人間の価値がなくなるのではありません。
AIによって、人間にしかできないことが、よりはっきりしてくる。私はそう考えています。最後に、皆さんに一つ問いかけます。
あなたがこれまで「自分の強み」だと思ってきた能力は、AI時代にも本当に強みであり続けるでしょうか。

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
富士通、ソフトバンクを経て99年に現セブンネットショッピングを設立。セブン&アイHLDGS.取締役執行役員CIOとしてグループのデジタルトランスフォーメーションを推進。17年にデジタルシフトウェーブを設立し現職。日本オムニチャネル協会会長等も務める。





















