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インタビュー

メヂカルフレンド社が進める出版DX、看護業界の課題解決を視野にデジタル化を加速

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看護師を目指す学生や看護師に役立つコンテンツを取り扱うメヂカルフレンド社。代表取締役社長に就任した亀井淳氏は、学生や看護師にどんな価値を提供するのか。看護業界にどう貢献したいと考えるのか。さらに、自社の変革を促すDXをどう主導するのか。セブン&アイ・ホールディングス在職中、イトーヨーカ堂の代表だった亀井氏とともに仕事をした経験のあるデジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏が、亀井氏が断行する改革に切り込む。

看護業界の課題解決に貢献する出版事業

鈴木:メヂカルフレンド社の事業内容を教えてください。

亀井:当社は、看護職をはじめとした医療・福祉関係の仕事を目指す人向けの学習コンテンツを提供する出版社です。1947年の創業以来、看護職を養成するための教材や単行本、雑誌、問題集、辞典などを発行しています。一方で近年はデジタル化に着手し、デジタルコンテンツも提供しています。看護学生をはじめ、看護に従事する人に役立つコンテンツづくりに強みを持っています。

鈴木:私がセブン&アイ・ホールディングス在職中、亀井社長と仕事をご一緒させていただく時期がありました。私は当時、グループ全体のシステム構築にかかわっていましたが、イトーヨーカ堂の代表だった亀井社長から多くのご指導をいただきました。10年以上前のことですが、昨日のことのように覚えています。イトーヨーカ堂を退任されてからメヂカルフレンド社の代表に就任するまでの経緯を教えてください。

亀井:私は61歳のときにイトーヨーカ堂の代表に就任し、経営に約9年間従事してきました。その後、イトーヨーカ堂を退きましたが、メヂカルフレンド社の顧問弁護士から事業を手伝ってほしいと依頼されたのです。打診直後は「この年齢で社長…」と正直戸惑いましたね。しかし、看護師を目指す人や看護師に役立つコンテンツを取り扱う事業には社会的意義が大いにある。そう感じ、お引き受けすることにしました。1年前のことですね。

写真1:
株式会社メヂカルフレンド社
代表取締役社長
亀井淳氏

鈴木:看護師を取り巻く現状をどう認識していますか。

亀井:多くの課題が山積しています。日本はすでに超高齢社会に足を踏み入れ、より高度な医療体制や看護体制が求められるようになっています。しかし、2025年には看護職の就業者数が最大で27万人不足するとされています。追い打ちをかけるように、新型コロナウイルス感染症まん延の問題もあり、看護職員の離職率は増加しています。新卒として採用した看護職員の離職率が2005年の調査以降で初めて10%を超えたという報告もあります。さらには、看護師養成施設の募集定員を下回る学生しか入学しない状態が続いています。養成施設自体も2018年をピークに減少しています。様々な状況をみても看護師を目指す学生や看護師にとっては厳しい状況であることは否めません。このような看護師へのなり手が少なく離職率が高い状況が続けば、高齢化率が約35%になると予測される2040年には看護師不足がさらに深刻化します。看護師や看護師養成を取り巻く現状は深刻で、今後の日本の医療体制に大きな影響を及ぼす可能性があると危惧しております。

鈴木:看護師を目指す学生向けの教材を提供する出版社として、看護業界の現状をどう捉えていますか。

亀井:十分な知識やスキルを習得した看護師を輩出するための体制づくりに目を向けるべきだと考えています。今後は地域医療や在宅医療のニーズが高まり、看護師には様々な場での医療を支えるべくより高度な知識やスキルが求められるようになるでしょう。そのためには専門性を高めた看護師の育成が必要で、基礎教育における対応も不可欠です。当社がこうした体制構築の一端を担わなければならないと思っております。

鈴木:御社の強みであるコンテンツを通じて支援するわけですね。

亀井:はい。当社はこれまで、看護師を目指す学生や看護師に役立つコンテンツづくりに注力してきました。出版という媒体を通じ、看護業界全体に貢献してきた自負もあります。こうした強みをさらに高め、今後も看護職の養成・教育に一層の力を入れ、看護業界全体の課題解決に取り組んでいきたいと考えます。

鈴木:教材を提供する以外の支援策は考えていますか。

亀井:当社は看護業界にとってなくてはならない会社であるべき、と常々考えています。そのためには教材を出版するだけでは不十分です。そこで、看護師を目指す人や看護師に対し、あらゆる情報を提供できるようにすべきと考えます。例えば、学生は勉強しながらお茶を飲むでしょう。化粧をしたり落としたりすることもあるでしょう。マッサージで日々の疲れを癒したい人もいるでしょう。こうした生活のあらゆるシーンをサポートする情報を発信できる企業を目指したいですね。さまざまな情報を通じて学生や看護師を支援する企業になることを描いています。

鈴木:学生や看護師の方の視点に立った素晴らしいお考えですね。イトーヨーカ堂時代の小売業の経験が活かされていると感じます。

写真2:
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
鈴木康弘氏

亀井:セブン&アイ・ホールディングスの名誉顧問である鈴木敏文氏が代表だった当時、「相手のためではなく、相手の立場になって考えよ」とよく言われていました。この言葉を今も忠実に実行し、当社の社員にも相手の立場に立って考えることの大切さを発信し続けています。看護師を目指す学生や看護師の立場で何を求めているのかを模索した結果が、教材以外の情報提供という発想につながったのだと考えます。

社員の高い意欲がDX推進を後押し

鈴木:メヂカルフレンド社の社内についてお聞きします。社長として就任した直後、会社にどんな印象を持ちましたか。

亀井:典型的な“昭和の会社”だなと最初は思いましたね。1947年に創業した当時のままとさえ感じました。稟議書はもとより、出張申請や出勤簿にもすべてハンコ。紙の書類であふれ、今の時代にまったく追随できずにいると思いました。

鈴木:そんなとき、DXについて当社に相談いただいたわけですね。

亀井:「令和の会社にしよう」。これが私から社員に向けた最初のメッセージでした。しかし、どうすれば生まれ変わるのか、私は具体的なプランを持ち合わせていません。そこで鈴木さんが代表を務めるデジタルシフトウェーブに相談し、DXに舵を切ることにしたのです。

当時の社員は「DXって何?」といったレベルでした。しかし、鈴木さんに社員向けの講演を依頼し、DXの狙いや目的、成功させるために必要な心構えなどを解説してもらいました。その内容がまさに私が思っていたとおりのもので、多くの社員がDXの必要性を理解するきっかけになりましたね。あの講演以降、社員一人ひとりがDXに目を向け、協力的な環境が醸成されたと感じます。

鈴木:社員の高い意欲はDX推進に欠かせません。全社員一丸で取り組むDXは加速し、効果も如実に表れやすくなりますね。

亀井:社員と接するなかで、全社員のDXへの意欲を強く感じます。どんな取り組みが有効か、こんな取り組みを実現したいなど、各部署で自発的に議論する機会も増えましたね。こうした社員の意欲が萎縮しないよう心掛けるのが私の役目だと思います。「新しいことに挑戦しよう」と鼓舞し続け、「DXを成功させなければ当社の未来はない」と思っています。創業76年の歴史を大切にしつつ、変革を許容する姿勢も少しずつ育みたいと考えます。私自身、決してデジタルやITに強くありません。しかし、DXによってたどり着くゴールを明確に描き、社員全員が同じ方向へ迷わず突き進むようにすることが経営者としての使命だと感じます。

鈴木:DXに中途半端に精通するより、「DXの具体的な進め方は分からない。あとは任せた」と割り切れる経営者であることも大切ですよね。もちろんDXを直接主導する経営者もいるでしょう。しかし、具体的な施策の立案と推進を社員に頼む経営者のもとで、DXが加速するケースは珍しくありません。その意味で御社のDXは、適切なアプローチを踏んでいると感じます。

亀井:DXに取り組みだしてまだ1年ですが、効果は徐々に表れていると実感しています。例えば、ハンコによる印鑑文化を排除したのはもとより、スケジュール管理や勤怠管理、名刺管理を支援するITツールを相次ぎ導入。事務作業の効率性や生産性を徹底的に追求し、向上させました。

さらに現在、顧客データベースの構築にも取り組んでいます。顧客情報を一元化し、営業や商品企画などの各業務であらゆるデータを効果的に活用できるようにします。当社にとって基幹業務である編集業務もDXを進め、商品の品質管理や情報の正確性を高められるようにします。文字と画像だけではなく、動画やWeb、さらにはアプリを組み合わせ、コンテンツをよりわかりやすく、より使いやすい形で提供することも視野に入れています。有益な情報をただ提供するだけでは不十分です。看護師を目指す学生や看護師が勉強するシーンを想定し、情報をさまざまな場所や用途で使えるように提供します。こうした取り組みにも注力しています。

失敗を恐れず挑戦し続ける風土の醸成へ

鈴木:看護業界を取り巻く状況が厳しさを増す中、メヂカルフレンド社として学生や看護師、さらには社会に対し、どんな価値を提供したいと考えますか。

亀井:看護師を目指そうと思った瞬間から、看護師としてのスキルアップ、専門看護師あるいは看護管理者などへの将来的なキャリアアップも含め、「看護」にかかわるすべての接点で当社のコンテンツが役立ったらうれしいですね。新型コロナウイルス感染症のまん延を機に、多くの医療現場で過酷さが増しています。そんな状況であっても看護師を目指す学生や現場を支えている看護師に対し、コンテンツを通じて少しでも支えになりたい。そう考えます。学生や看護師の心を豊かにするといった価値を看護業界に訴求していきたいですね。

鈴木:創立76年の経験や実績がそこでは活きるわけですね。

亀井:長い経験で積み上げてきた実績は、当社の強みの1つです。そこには学生や看護師のほか、学校や書店、取次との間に強い信頼関係があります。今後はこうした関係をより深化できればと考えます。その手段がデジタルであり、これまでにないつながりも生み出せるのではと期待しています。

鈴木:御社のように歴史がある企業は、デジタル化によって可能性が大きく膨らみます。2倍どころではありません。何十倍にも可能性は広がるでしょう。

例えば小売業の場合、オムニチャネルを進めることで販路を容易に広げられます。さまざまな顧客接点も容易にフォローできるようになります。この考え方を御社に持ち込むだけでも、さまざまな可能性を見込めるでしょう。例えば紙の教材をデジタル化すれば、欲しいときに必要な情報を即時に届けられるようになります。看護師を目指す学生同士、もしくは看護師同士のつながりも容易に構築、深められるようになります。デジタルを活用すれば、これまで実現しなかった施策を具現化できます。学生や看護師に対し、新たな価値を提供できるようにもなるはずです。

亀井:リアルとバーチャルを融合するオムニチャネルの考え方は、小売業に留まりません。出版業界にも当然当てはまります。当社のようなこれまでデジタルと無縁だった企業にも浸透するはずです。当社がオムニチャネルやDXを進めるほど、その効果は学生や看護師、引いては看護業界に波及すると考えます。学生が勉強しやすい環境、看護師が働きやすい環境を築くためにも、当社が担う責任は大きいでしょう。そのためにも、全社員が強い使命感でDXに臨まなければならないと考えています。

鈴木:社会に貢献する事業を担う社員に対し、こう成長してほしいなどの思いがあれば教えてください。

亀井:各自が使命感を持たなければならないものの、それを重荷にしないでほしいですね。柔軟な発想でアイデアを生み、周囲とのコミュニケーションを通じてアイデアを育む。そんな姿勢で仕事に取り組んでもらえたらうれしいです。強調したいのは、失敗を恐れないこと。挑戦に失敗はつきものです。もちろん、失敗なしに成功はあり得ません。不安がらずに挑戦し、いろいろな考え方や意見を吸収してほしいですね。こうした経験がアイデアを生むヒントとなり、自社の成長を後押ししてくれると信じています。

鈴木:社員への愛情があふれていますね。社員の皆さんも亀井社長のもとで働けてうれしいと思っているはずです。

亀井:社員が伸び伸び働ける会社、風通しのよい会社であることが一番です。その結果、生産性が高まり、売上向上も見込めるようになる。こんなロードマップを描けるのが何よりですね。

鈴木:若い社員が多いメヂカルフレンド社の中で、亀井社長のお言葉は社員にとって貴重な財産です。最近は若い世代に遠慮し、言いたいことを言えない経営者を見かけることがあります。しかし亀井社長には、ぜひ自身のお考えを発信し続けてほしい。思ったことを社員に言い続けてほしい。さらには看護や出版、教育の現場に新たな風を吹き込んでほしい。そう強く願います。本日は貴重なご意見、大変勉強になりました。ありがとうございました。

亀井:こちらこそDXの取り組みを含め、鈴木さんの考えを聞く機会をいただき、感謝しています。本日はありがとうございました。

写真3:終始笑顔の絶えない中、二人の対談は進んだ

株式会社メヂカルフレンド社
https://www.medical-friend.jp/

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