起業といえば若者の特権、そう思い込んでいませんか?最新の調査で、新設法人の約3割を占めるまでに急増した『合同会社』の勢いが明らかになりました。しかし、主役は若者ではなく平均47歳。株式会社の衰退と、急増する合同会社の手軽さの裏に隠された致命的な格差とリスクの全貌に迫ります。
株式会社の勢いに陰り、コスト安とスピード経営で4万社を突破した背景
東京商工リサーチが発表した2025年の新設法人調査によると、全国で新たに設立された法人は15万7,011社(前年比1.9%増)でした。この中で際立った伸びを見せたのが「合同会社」です。前年比6.8%増となる4万4,991社が新設され、いまや新しい会社全体の28.6%と、約3割を占める規模に達しています。一方で、長年主役だった「株式会社」は10万558社で最多を維持したものの、新設数は2年連続で減少しました。かつての定番である株式会社の勢いに陰りが見える一方、合同会社が日本の起業シーンの伸びを強力に牽引しています。この背景には、設立費用の安さや株主総会が不要な点、さらには出資者と経営者が一致することでスピーディーな経営判断ができるという、スタートアップやインボイス制度対応の個人事業主にとって極めて実利的なメリットがあります。
しかし、この増勢の裏で起業者たちの属性や環境にはドラスティックな地殻変動が起きています。代表社員の平均年齢は47.77才と、過去10年で最高を記録しました。これまで合同会社の拡大を支えてきた20代の割合は、2023年の9.0%から5.0%へと急減。代わりに30代(23.4%)や40代(29.6%)の実績豊かなミドル層による起業が主役に躍り出ています。産業別では、経営コンサルタントなど個人の実績を活かした学術研究,専門・技術サービス業が7,029社で最多となり、次いで地価上昇による投資ニーズを捉えた不動産業が4,919社で続いています。地域別では東京都が32.2%を占めて都市部への集中が目立つ中、宮城県が前年比24.4%増とトップの伸びを記録する一方、富山県が17.0%減と最大の減少を示すなど、地域間での格差も鮮明になりました。
会社法導入から約20年を経て認知が広がった合同会社ですが、自由度の高さゆえの重大な罠も潜んでいます。決算公告の義務がないため事務コストは抑えられますが、取引先からの信用評価が低くなるデメリットは避けられません。さらに一部の投資運用で悪用されるケースが多発しており、金融庁が社員権の取得勧誘に対して注意喚起を促すなど、信頼性においては株式会社に一歩及ばないのが実情です。また、2024年10月に開始された「代表者住所の一部非公開制度」が株式会社のみの適用となり、合同会社では活用できないため、プライバシーを保護したい経営者が株式会社を敢えて選ぶ根強い動きもあります。手軽さという最大のメリットと、ガバナンスや信用面でのリスクという二面性をどうコントロールするかが、今後の合同会社の信頼上昇の鍵を握っています。
見解として、設立コストや意思決定の「タイパ」を最優先して合同会社を選ぶミドル起業家が増える一方、ガバナンスの不透明さが取引上の足かせになるリスクは依然として残ります。 2026年現在のビジネストレンドにおいて、代表者住所非公開などのプライバシー防衛や社会的信用を重視するならば、あえて株式会社を選択する戦略的な判断も必要不可欠です。
詳しくは「東京商工リサーチ」の公式ページまで。 レポート/DXマガジン編集部 戸田





















