人材育成

    2022.04.06

    「デジタル格差」が迷走に拍車をかける

    リーダーの覚悟不足、エンジニアやマーケターへの過度な期待、外部依存…。これらの要因でDXが進まないケースは少なくありません。しかもこうした“他人任せ”の意識が根付く企業では、従業員の仕事への意欲や姿勢が二極化する「デジタル格差」を生み、DXをさらに迷走させてしまいます。ではなぜ、DXを他人任せにしてしまうのか。ここではその要因を探ります。なお、本連載はプレジデント社「成功=ヒト×DX」の内容をもとに編集しております。

    エンジニアやマーケターへの過度な期待がDXを停滞させる

     そもそも「他人任せ」とはどんなケースを言うのか。その最たる例が、エンジニアやマーケターの採用です。

     2021年初頭の時点で、エンジニアとマーケターの有効求人倍率は5倍を超えています。ほかの職種のそれが1倍前後であることを考えると、その人気は群を抜いています。中にはシステム会社や広告代理店に数年勤めた程度の30歳前後の若手に対し、1000万円超の年収を提示して入社を促す企業も見られます。

     企業はおそらく、ネットに精通するエンジニアやデジタルマーケティングの経験があるマーケターを採用すればDXを進められる、と思い込んでいるのかもしれません。しかしこうした状況はもはや異常で、いびつな雇用格差を起こす要因になっています。

     筆者はこうした状況を、ネットバブル時代に人材獲得が過熱したときに似ていると感じます。当時はインターネットブームで、Webデザイナーやネットワークエンジニア、ゲームクリエイターなどが脚光を浴びていました。しかし、ブームが過ぎると、こうした人たちも“ただの人”に。こうした人たちを大量採用した企業の中には、人件費が大きな負担になったことを理由にリストラを断行するケースもありました。

     現在の状況は当時と酷似しています。エンジニアやマーケターの獲得合戦も、一部の本当に優秀な人を除けば、すぐ落ち着くでしょう。しかし、ネットバブル時代のときの状況が続けば、多くの企業が同様の過ちを繰り返すかもしれません。エンジニアやマーケターへの過度な期待が、DXを停滞させる可能性があるのです。

    エンジニアやマーケターを採用してもうまくいかない理由

     筆者のもとに、採用について相談してくる顧客は少なくありありません。そんなときは必ず、「DXを推進するのに本当に必要なのは、エンジニアやマーケターではなく、“DX人材”です」とアドバイスします。「エンジニアやマーケターを採用しすぎるべきではありません。やがて負担になりますから」ともアドバイスします。

     すると顧客からは、「エンジニアやマーケターとDX人材は違うのですか?」と予想通りの質問が返ってきます。

     そこで筆者は、「エンジニアはシステムの専門家、マーケターはプロモーションの専門家です。DX人材とは、業務やシステムを熟知し、企業に変革を起こせる人です」と答えます。

     エンジニアやマーケターは専門的な知識やスキルを持っていても、現状を「変える」スキルを持ち合わせた人は少ないでしょう。こうした人を採用できたとしても、その取り組みはシステム導入やWeb販促などの表面上の仕事に限定されます。目指すべきDXは実現されないことが多いのです。

     ITやプロモーションの専門家を高い給与で採用するのは間違いです。何より大事なのは、企業内の人材を「DX人材」として育成することです。これがDXの近道で、現実的な解決方法と言えます。
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