日本の輸出額が過去最高となりました。しかし、それ以上に輸入額が膨らみ、貿易収支は3カ月連続の赤字となっています。財務省が2026年8月20日に公表した「令和8年7月分貿易統計(速報)」によると、7月の輸出額は前年同月比23.2%増の11兆5,118億円、輸入額は27.8%増の12兆1,463億円でした。いずれも1979年1月以降で過去最高です。輸出が大幅に増えた一方、輸入の伸びがそれを上回った結果、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6,345億円の赤字となりました。
DXマガジンでは、企業の経営判断に役立つ各省庁・公的機関の統計や調査データを継続的に紹介しています。今回は、輸出入ともに過去最高となった日本の貿易で何が起きているのか、7月の最新データから見ていきます。
輸出額は11兆5,118億円、11カ月連続で増加
7月の輸出額は11兆5,118億円となり、前年同月から23.2%増加しました。輸出額の増加は11カ月連続です。1979年1月以降では過去最高となり、7月としても過去最高を記録しました。輸出数量指数は112.2で、前年同月比5.2%増となりました。数量指数の上昇は5カ月連続です。輸出金額だけでなく、数量ベースでも前年を上回りました。輸出額を押し上げた主な品目の一つが自動車です。自動車の輸出額は前年同月比19.5%増となりました。さらに、半導体等電子部品は49.1%増、半導体等製造装置は40.9%増となっています。自動車に加え、半導体関連の輸出が大きく増えたことも7月の特徴です。
輸入は27.8%増、12兆1,463億円で過去最高
輸出以上の伸びとなったのが輸入です。7月の輸入額は12兆1,463億円で、前年同月比27.8%増となりました。輸入額の増加は6カ月連続です。輸出と同じく、1979年1月以降で過去最高となり、7月としても過去最高を記録しました。輸入額の増加に大きく寄与した品目の一つが原粗油です。原粗油は前年同月比87.8%増となりました。半導体等電子部品も79.7%増、非鉄金属も67.7%増となっています。エネルギーに加えて、電子部品や金属などの輸入額も大きく増加しています。
輸出が過去最高でも、6,345億円の「貿易赤字」
輸出が前年同月から23.2%増えたにもかかわらず、日本の貿易収支は赤字となりました。輸出額11兆5,118億円に対し、輸入額は12兆1,463億円。その差額は6,345億円の赤字で、貿易赤字は3カ月連続となりました。前年の2025年7月も1,563億円の赤字でしたが、2026年7月は赤字額が前年同月比306.0%増となり、赤字幅が大きく拡大しています。ただし、今回の結果を「日本からモノが売れなくなったため赤字になった」と捉えるのは適切ではありません。輸出額自体も前年同月から23.2%増加しています。一方で輸入額は27.8%増となっており、輸入額の伸びが輸出額の伸びを上回ったことが、貿易赤字拡大の背景にあります。
1ドル161.83円、前年から11.2%の円安
今回の貿易統計を見る上で注目したいのが為替です。財務省の資料に記載された税関長公示レートの平均値は、2025年7月の1ドル145.56円から、2026年7月には1ドル161.83円となりました。前年同月と比べて11.2%の円安です。貿易統計の輸出額や輸入額は円換算した金額で示されるため、金額の大幅な伸びを見る際には、数量だけでなく為替などの影響も考慮する必要があります。実際、輸出額は前年同月比23.2%増でしたが、輸出数量指数は5.2%増でした。輸入についても金額は27.8%増だったのに対し、数量指数は1.2%増です。
つまり、輸出入額が大幅に増えたからといって、「日本と海外とのモノの取引量そのものが同じ割合で急増した」と捉えることはできません。金額と数量の両方を見ることが重要です。
米国向け輸出は22.0%増、対米黒字は50.7%減
地域別では、米国との貿易にも大きな動きがありました。米国向け輸出額は2兆909億円で、前年同月比22.0%増となり、5カ月連続で増加しました。なかでも自動車は32.1%増となっています。
一方、米国からの輸入額は1兆8,105億円で、前年同月比58.0%増となりました。輸入が輸出を大きく上回るペースで増加した結果、対米貿易黒字は2,804億円となり、前年同月から50.7%減少しました。対米黒字額の減少は8カ月連続です。米国向け輸出が増えている一方で、それ以上のペースで米国からの輸入が増えていることが分かります。
中国との貿易赤字は7,754億円、64カ月連続
中国との貿易を見ると、中国向け輸出額は2兆90億円で、前年同月比25.8%増となりました。一方、中国からの輸入額は2兆7,844億円で、26.2%増です。その結果、中国に対する貿易収支は7,754億円の赤字となりました。対中貿易赤字は64カ月連続です。品目別に見ると、中国向け輸出では半導体等電子部品が129.2%増、半導体等製造装置が32.6%増となった一方、自動車は34.0%減少しました。中国からの輸入では、通信機が47.4%増、非鉄金属が99.1%増、電算機類(周辺機器を含む)が12.7%増となっています。
同じ「中国との貿易」でも、半導体関連の輸出が大幅に増える一方、自動車は減少するなど、品目によって大きく異なる動きが見られます。
「過去最高」だけでは見えない、日本企業を取り巻く貿易環境
2026年7月の貿易統計では、輸出額と輸入額がともに1979年1月以降で過去最高となりました。しかし、「過去最高」という金額だけを見ると、日本の貿易で起きている変化を見誤る可能性があります。輸出金額が23.2%増えたのに対して数量指数は5.2%増、輸入金額が27.8%増えたのに対して数量指数は1.2%増でした。そして為替は前年の1ドル145.56円から161.83円へと円安が進んでいます。
円安は、輸出額を円換算した際の金額を押し上げる要因の一つになり得ます。一方で、海外から原材料やエネルギー、部品などを調達する企業にとっては、輸入金額の増加につながる可能性があります。実際の影響は、海外生産の比率や調達先、為替ヘッジなど、それぞれの企業の事業構造によって異なります。
今回の統計から企業経営を考える上では、「輸出入が過去最高だった」という結果だけでなく、何が増え、何が減り、どの地域との取引が変化しているのかを見ることが重要でしょう。
特に、原粗油や半導体等電子部品、非鉄金属などの輸入額が大きく増えていることは、海外から原材料や部材を調達する企業にとって注目すべき動きです。どこから仕入れ、どこで生産し、どこへ売るのか。貿易環境や為替が大きく動く中、今回の数字は企業が調達先やサプライチェーン、海外事業のあり方を考えるための一つの材料になりそうです。
詳しくは「財務省「令和8年7月分貿易統計(速報)の概要」(2026年8月20日公表)」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















