上場企業の平均年収が2025年度に692.6万円となり、5年連続で上昇しました。平均年収1000万円超の企業は235社と過去最多で、東証プライム市場は平均793.2万円に達しました。製造業は初の700万円台に乗せ、非製造業も堅調に伸長しています。一方で500万円台以下の企業も依然3割超を占め、賃上げの二極化が進んでいます。株式会社帝国データバンクの調査結果を基に、産業別や市場別の動向、賃上げの背景と示唆を整理します。
平均年収は692.6万円で最高更新 増加額と伸び率も過去最高に

2025年度決算期の上場約3700社で、平均年収は692.6万円でした。前年度の671.1万円から21.5万円、割合で3.2%の増加となり、どちらも過去最高の伸びです。月換算では約1.8万円の上昇で、中央値は661.6万円となりました。対象は有価証券報告書に平均年間給与や平均年齢、勤続年数を記載した企業で、持株会社や従業員数などによる絞り込みはありません。2024年度から2025年度の変化では、平均年収が増えた企業の割合が76.8%と最高水準となりました。増加率は2.5%以上5%未満が最も多く、5%以上10%未満が約2割、10%以上も約1割に達しました。人手不足を背景に初任給の引き上げが広がり、既存社員の給与テーブルに波及したことが平均の押し上げ要因となっています。
平均年収1000万円超は235社で最多 500万円台以下は34.8%

平均年収帯の分布を見ると、最も多いのは600万円台で939社の25.6%です。次いで500万円台が850社の23.1%、700万円台が677社の18.4%でした。1000万円以上は235社で6.4%となり、社数として初めて200社を突破して過去最多となりました。上場後に初めて1000万円を超えた企業は51社でした。一方で500万円未満は430社で11.7%、500万円台以下の合計は34.8%に上ります。高水準の賃上げを継続できる企業と、低収益やコスト高で賃上げに限界がある企業の差が広がっている状況が示されています。平均年収の上振れは一部の高給与企業が牽引しているため、自社のポジションを分布で把握し、必要な施策の優先度を検討することが重要です。
産業別では製造業が初の700万円台 海運業が1120.1万円で首位
産業別では、全産業で2003年度以降の最高額を更新しました。製造業は平均702.6万円で、前年度から20.9万円の増加となり、初の700万円台に到達しました。非製造業は平均686.8万円で、前年度から21.8万円の増加と、サービス業を中心に上昇が目立ちます。平均年収が最も高い業界は海運業で1120.1万円と、唯一1000万円を超えました。証券、商品先物取引業が962.1万円、保険業が936万円、鉱業が911.7万円と続き、いずれも好業績が賃上げを後押ししました。伸び率で最も高かったのはゴム製品で13.2%増の695.6万円でした。他産業への人材流出を防止する目的での給与引き上げなど、人材投資の強化が数値に表れています。
市場別では東証プライムが793.2万円で牽引 全市場で平均600万円超に

上場市場別では、東証プライムの平均が793.2万円と最も高く、前年度比で3.9%、29.9万円増と伸びも最大でした。東証グロースは648万円、東証スタンダードは615.6万円と、いずれも600万円を上回りました。東証プライムは平均800万円台が目前で、足元の大幅な賃上げペースを踏まえると到達可能性が示されています。市場規模や収益力の差が給与水準に反映される構図が続き、賃上げ余力の差が企業間の人材獲得力にも影響しています。採用広報や報酬設計の見直しが市場別ベンチマークを踏まえて進む公算が大きい状況です。
賃上げの加速と同時に顕在化する課題 初任給上昇と「黒字リストラ」
人手不足対応により賃上げが進む一方で、課題も見られます。2026年4月入社の新卒の初任給を引き上げた企業は67.5%で、平均引き上げ額は9462円でした。物価高対応や人材確保を目的とする賃上げが続く中、成長分野で原資を確保できる企業と、防衛的な賃上げにとどまる企業の二極化が進行しています。さらに、40代から50代以上を対象とする人員構成の見直しが広がり、賃上げの恩恵を受ける層としわ寄せを受ける層の差が生じています。平均年収の見映えや初任給の高さだけでなく、中堅や管理職層を含めた評価と報酬制度の再設計が問われる局面にあります。継続的な賃上げが人材定着と生産性向上につながるよう、内部の配分設計と投資のバランスが重要になります。
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