株式会社商船三井と日本アイ・ビー・エム株式会社は、船舶運航に関わる多様な情報を統合し、意思決定を高度化するAI活用型プラットフォームを共同開発しました。7月1日から運用を開始し、世界中を航行する商船三井グループの関連船舶の安全運航を支援します。中核となるのは商船三井の安全運航支援センターで、分散していた気象・海象、航行状況、地政学動向といった情報を一元管理し、警戒すべき情報を迅速に抽出することを目指します。これにより、運航判断の質と対応速度の両立に取り組み、重大事故の未然防止につなげます。背景には、気象・海象の急激な変化や地政学的要因の影響拡大により運航環境が複雑化している現状があります。商船三井は、この取り組みを経営計画「BLUE ACTION 2035」Phase 2における「安全」「DX」を軸とした価値創出施策の一つと位置づけています。
7月1日に運用開始 多様なデータを一元化し現場判断を支援
本プラットフォームは、商船三井の安全運航支援センターを中核として運用されます。24時間365日、運航船舶の状況を統合的に把握し、船長や運航管理者の判断を助言する同センターの機能を、データ統合とAIによって拡張します。従来は個別に参照していた気象・海象データ、船舶の運航データ、地政学関連情報をリアルタイムに統合するデータ管理基盤を構築し、一元的に可視化します。これにより、航行中の船舶の周辺環境を俯瞰しながら、重要事象を素早く特定できる体制を整えます。運用開始日は7月1日とされ、世界の海域を航行する関連船舶を対象に安全運航を支えます。SOSCが蓄積してきた運航知見をベースに、状況変化への対応速度を高め、平時からの予防的判断を促進します。結果として、現場からの問い合わせや通報に対しても、情報の抜け漏れを抑えた助言が可能になります。
生成AIによる優先順位付け 過去事例と現在情報を踏まえたリスク抽出
本プラットフォームの中核機能の一つとして、AIアシスタントが過去の運航実績と現在の運航情報を組み合わせ、リアルタイムにリスクを特定・抽出します。生成AIを活用し、動静監視や状況評価における重要度の判定や優先順位付けを行うことで、意思決定の迅速化に寄与します。例えば、気象急変の兆候や海域の地政学的リスクに関する更新を横断的に把握し、担当者が即時に対応判断を進められるよう支援します。AIの出力に対しては、船長経験者を含むSOSCの知見を組み合わせ、判断の質を引き上げます。情報が膨大化する環境下で、ノイズの中から重要シグナルを浮かび上がらせる役割を担います。これにより、確認作業の重複や判断遅延のリスクを低減し、運航計画の変更や警戒措置の発出を適時に実行できます。
ナレッジ活用の高度化 事故情報や対応事例を組織的に共有・分析
第三の特長は、ナレッジ活用の高度化です。過去の事故情報や対応事例、現場で培われた知見を体系的に蓄積し、組織全体で共有・分析できるようにします。従来、担当者間や現場に分散していた暗黙知を、再利用可能な形で検索・参照できることで、同種事案への初動や是正提案の精度向上が期待されます。SOSCが担う助言機能に、ナレッジベースが加わることで、状況に応じた判断材料の提示が迅速になります。結果として、重大事故の未然防止に向けた学習サイクルが組織的に回りやすくなり、属人化の抑制にもつながります。こうした情報資産の活用は、運航の信頼性向上に資するだけでなく、将来的な機能拡張や対象業務の拡大にも土台として機能します。継続的なアップデートにより、最新の対応知見が現場の判断に反映される仕組みを構築します。
共同開発の体制と手法 MOLの知見とIBMのAI・データ専門性を融合
開発にあたっては、商船三井のSOSCが蓄積してきた運航知見、MOL INFORMATION TECHNOLOGY INDIA PVT. LTD.のAI技術、日本IBMのAI・データ活用の専門知識を組み合わせました。さらに、顧客ニーズに沿ったシステムデザインの提案から開発・実装までを一気通貫で推進するIBM Garageの手法を活用し、短期間での構想具体化と反復的な実装を進めています。これにより、現場要件に即した機能定義や検証が行われ、実運用での使い勝手を重視したプラットフォームが実現されました。両社は、それぞれの強みを明確に持ち寄り、運用現場の課題解決に直結するアーキテクチャを志向しています。日本IBMはデータ統合と生成AIの適用設計を担い、商船三井は運航安全の要件定義や評価をリードしました。協働の枠組みにより、導入初期から運用価値を引き出す仕組みが整備されています。
今後の展望 安全性向上と対象業務の拡大、BLUE ACTION 2035に位置づけ
商船三井グループは、関係各社と連携しながら本プラットフォームの機能拡張と対象業務の拡大を継続的に進める方針です。海運業界全体の安全性向上への貢献を掲げ、予防的な安全管理をさらに進化させます。あわせて、海上輸送の信頼性向上を通じ、社会およびステークホルダーへの価値提供を強化します。本取り組みは、商船三井の経営計画「BLUE ACTION 2035」Phase 2において、経営基盤を強化する「安全」「DX」を軸とした価値創出施策の一つとされています。SOSCの中枢機能である24時間365日のモニタリングと助言体制が、AIとナレッジ基盤により強化されることで、複雑化する運航環境へのレジリエンスを高めます。気象・海象や地政学動向の急変にも即応できる運用を目指し、運航判断の質を継続的に引き上げていきます。今後のアップデートでは、実運用で得られた知見を反映し、利便性と安全性の両面で効果を積み上げる計画です。
詳しくは「株式会社商船三井」「日本アイ・ビー・エム株式会社」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















