人材育成

    2022.08.25

    システム全容を見える化し、機能・技術・費用・組織の4視点で課題を追求せよ

    ITシステムを自社でコントロールできるようにするには、使用中の全システムを洗い出し、現状を見える化することが欠かせません。その上で課題を探り、原因究明に臨むべきです。では、システムをどのように見える化し、課題を抽出すべきか。ここではその作業工程を紹介します。なお、本連載はプレジデント社「成功=ヒト×DX」の内容をもとに編集しております。

    自社システムの状況を見える化せよ

     前回はITシステムを自社でコントロールする必要性について紹介しました。今回は、自社でコントロールするのに必要な考え方や具体的な取り組みを紹介します。

    参考:前回の記事/ITシステムを自社でコントロールする必要性と専門チーム構成方法はこちら
    ITは自社でコントロールし、クラウドを前提とした柔軟なシステム像を描け

     システムと言うと一般的に、経営者や役員はその全容を把握していないケースが少なくありません。「御社のシステムについて教えてください」と経営者や役員に質問すると、「情報システム部門に聞いてください」などの答えが返ってくることがよくあります。

     これだけ業務とシステムが密接な関係になったにもかかわらず、トップが自社のシステムについて明確に答えられないのが筆者は不思議でなりません。

     これからは、専門的と言われるシステムについて、トップを含む多くの人が理解することが欠かせません。そのためにはまず、システムの全体像を「見える化」することが有効です。

    システム全体を「一覧表」にする

     システムの全容を「見える化」するとは具体的にどういうことか。まずは自社のシステム全体を洗い出し、一覧化することから始めます。

     最近のシステムは、情報システム部門が主に把握する基幹系システムのほか、各業務部門が独自にクラウドを導入するケースが目立ちます。そのため、情報システム部門にヒアリングして使用中のシステムを把握するだけでは不十分です。さまざまな部門にヒアリングし、使用中のクラウドシステムなども把握します。もし、システム導入に携わった人が辞めてしまった、誰が一番詳しいのか分からないといった場合、少しでも知っている人から断片的な情報でも収集するようにします。

     なお、システムの洗い出しは、「フロントシステム」「バックシステム」「基幹システム」の3つに分けて実施するとスムーズに進められます。

     「フロントシステム」は、顧客と直接やり取りするシステム、「バックシステム」は会社の運営に必要な管理系のシステム、「基幹システム」は企業活動の心臓部にあたるシステムで、それがないと企業活動が止まってしまうシステムが当てはまります。特に「基幹システム」は、在庫管理や販売管理、仕入れ管理、顧客管理などの目的を絞ると把握しやすくなります。システムを「見える化」するには、この基幹システムをきちんと把握することが極めて大切です。

     システムを「見える化」する際、下図のような項目を洗い出していくのが有効です。導入時期や初期費用、運用費用、OSや開発言語などが分かるようまとめます。
    図1:システム全体の一覧化

    図1:システム全体の一覧化

    via プレジデント社「成功=ヒト×DX」
     筆者はこれまで何度もシステムの見える化に取り組んできました。項目を細かくすればするほど資料としての精度は高まるものの、誰もが分かる資料にはなりにくくなります。システム担当者以外の人が見ても分かるように作成するのがポイントです。

    システムコストを明確にする

     一覧を作成したら、次の点をシステムごとに把握できるようにします。
    ・どこのベンダー(供給元)が使っているのか
    ・何というパッケージやサービスを利用しているのか
    ・コストはどれだけかかっているのか(初期費用と月額の運用費用でまとめる)

     ベンダー1社に対し、複数のシステムを使っているケースがあります。このとき、複数システムの合算しか把握していないことがあります。ベンダーに協力してもらい、できるだけ「システム単位」のコストを洗い出すようにします。

     企業の中には、1社のベンダーに発注を集約した方がコストを抑えられると考えるケースがあります。しかし例えば、セキュリティシステムはセキュリティ専門ベンダーに見積もりを取ると、コストを大幅に抑えられることがあります。これまでの付き合いや、いつも同じベンダーに発注しているからなどの理由ではなく、特定分野に特化した専門ベンダーに相談することも必要です。さらに、保守契約を締結していても、実際にはほとんど使われないケースもあります。システム単位で整理し、利用状況などを把握することが大切です。

    システム全体構成図を作成する

     システムを一覧にしたら、「フロントシステム」「バックシステム」「基幹システム」別にシステム同士の関連性が分かる構成図を作成します。どのシステムとどのシステムが連携しているのか。どのシステムのデータが集約されているのかなどを見える化します。

     ここでもあまり複雑にならないよう配慮します。資料として1枚で完結する程度の構成図を作成するのがポイントです。複数枚にまたがった全体構成図では全容が伝わりにくくなります。

    システムの課題は4つに分類して追求

     システムの全体構成図を作成したら、次は「課題」を洗い出します。「フロントシステム」「バックシステム」「基幹システム」別にどんな課題があるのかを明確にします。このとき、「機能」「技術」「費用」「組織」の4つの視点で課題を洗い出すのがポイントです。
    図2:システムの課題を探り、原因を追究する

    図2:システムの課題を探り、原因を追究する

    via プレジデント社「成功=ヒト×DX」
    1.機能面の課題と原因
     機能面の課題は、業務改革で整理した業務フロー図と課題を意識して整理します。主な課題は3つです。1つ目は、本来システム化すべきものがされていないか、2つ目は、システム化しているが機能に問題があるか、3つ目はほとんど使われていないシステムがあるか。課題はこの3つに集約されます。

     原因には、現場とのコミュニケーション不足、エンジニアの業務知識不足などがあります。

    2.技術面の課題と原因
     技術面の課題は、システムの観点から整理します。主な課題は3つです。1つ目は、システムを統一して構築していないこと、2つ目は、システムのトレンドに遅れていること、3つ目は、システムが老朽化していること。課題はこの3つに集約されます。

     原因には、エンジニアのスキル不足、システムへの投資不足などがあります。

    3.費用面の課題と原因
     費用面の課題は、単純にコストだけではなく、投資対効果も意識して整理します。主な原因は3つです。1つ目は、システム会社の開発コストが高いこと、2つ目は、運用コストが高いこと、3つ目は、投資対効果が見合わないシステムを導入していること。課題はこの3つに集約されます。

     原因には、経営者の不干渉、システム会社の使い方、システム投資判断の基準がないことなどがあります。

    4.組織面の課題と原因
     組織面の課題は、システム構築体制の観点から整理します。主な原因は2つです。1つ目は、システム部門が脆弱なこと、2つ目は、外部のシステム会社に依存しすぎていること。課題はこの2つに集約されます。

     原因には、経営者のシステム知識不足、会社のシステム軽視風土などがあります。

     ここで洗い出した課題をすべて解決するのは容易ではありません。課題に優先順位を設け、対応していくことが大切です。

     この一連の作業で大切なのは、「システム担当者でなくても理解可能な資料を用意すること」です。システムを自社でコントロールするには、経営者をはじめ、多くの社員がシステムの状況を把握できるようにるのが必要です。そのためには、部署や立場を問わず、システムについてオープンに議論できるようにする環境づくりが重要です。システムの課題解決には、ざっくばらんに議論するプロセスが極めて有効です。共通意識を醸成できるようになれば、推進スピードを高められるし、コスト削減も見込めます。会社全体としてプラスの効果を上げられるようになるのです。
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    本連載は、プレジデント社刊行の「成功=ヒト×DX」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
    プレジデント社「成功=ヒト×DX」
    筆者プロフィール
    鈴木 康弘
    株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長
    1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。
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